茨城大学文藝部の部室に置いてある「文藝部ノート」のオンライン版と称したブログです。部員の新たな一面が見られるかも……?

文藝部オンラインノート

2022.12.04

あとがき:愛憎

 

 お初にお目にかかります。湫を自称している文藝部員です。名前だけでも覚えて頂けますと嬉しいです。こういった時に何か気の利いた一文でも付け加えるのが文藝部員のたしなみなのでしょうが、恥ずかしながらそういったセンスは持ち合わせていないので、早速ですがあとがきの方に入らせていただきます。

 

『愛憎』

 愛が憎しみに至る過程と加害、それに対する赦し、不完全な母娘、メンヘラ…… 等々重めのクソデカ感情をテーマに据えて書き上げました。二十歳そこらの青二才がこんな重い話を扱って、あまつさえ小説にするなんておこがましいにも程がある、と重々承知の上ではありましたが、なんとか自分の中では満足のいく作品に仕上げられたと感じております。

 

 この作品は、所謂、「機能不全家族」に生まれた少女が大人になって二児の母となったことで、過去の母の姿と今の自身を重ね合わせ、精神的な赦免に至ったものの、当人の本心は聞けずじまいだった…… というお話です。全体的に暗く湿っていて、後味の悪そうなお話にはなりましたが、生命や新しさを想起させる結びの文でなんとかバランスを取ろうと無駄な抵抗をしてみました。

 

 メタ的な反省をすると、梓さんの家族内における父と弟の影の薄さが目立ちすぎたな、と感じています。言い訳をさせていただくならば、梓さんの視点から話を展開する以上、目に映るのは彼女の興味に沿ったものではなくてはと思い、彼女の心の大部分を占めるであろう、母と祖母の話が中心になってしまった、という訳です。そうだとしてもあんまりではあったので、今後の創作においては気をつけていきたい所存です。

 

 さて、ここからは作品の外に目を向けて、裏話的ななにかをしたいと思います。いくらかの部員にはお話したのですが、実の所、『愛憎』は私の知り合い、つまり実在する人物の半生に着想を受けて書き上げました。その方はあっけらかんと、まるで普通のことのようにお話ししてくれたのですが、そこに至るまでの当人の心境の過程を想像し、心に深く染み入り、思うところがあったので、小説の題材にする許可を頂き、この作品が生まれることになりました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。このあとがきを読んでいただけているかはわかりませんが……

 

 最後に、「愛憎」と銘打った作品を書くにあたって、私なりに色々と愛や憎しみについて改めて考察もしてみたのですが、そんな難しいことを考えてみても、愛どころか初恋も知らない、恋に恋する乙女である私には答えは見つかりませんでした。私はなにもわからないままでしたが、この作品を読んでいただけた皆様の、心の琴線にほんの少しでも触れられていたら、と願うばかりです。

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